NISAのデメリット?課税口座へ移管するとき何が起こるのか

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NISAは投資を使った資産運用で節税の恩恵を得られる優れた制度ですが、別の口座へ移すときに保有する金融商品の価値によってはデメリットが発生します。

ところが同じことをしてもお得になるパターンもあるため、複雑な制度だと言われることが多いんですね。

別の口座へ移すときに損も得も発生する仕組みを知っていれば、NISAをより上手に扱えるようになるでしょう。

NISA口座の非課税期間が終わった後

NISAは永遠に使える口座ではありません。非課税の期間が決められており、期限がやってくると保有する金融商品をどうするのか、決断を迫られるようになります。

課税口座に移管

課税口座とは、「特定口座」もしくは「一般口座」のことです。

NISAの非課税期間が終了した時点で、保有する金融資産を開設済みの課税口座へ移されます。これを「移管」と言います。

一般NISAの場合は2019年以降に取得した金融商品、つみたてNISAの場合は取得したすべての金融商品を対象に、期間が終了すると強制的に課税口座へ移されます。

NISAを扱っている証券会社などで口座開設したとき、一緒に課税口座も作成済みだと思います。もし、まだ持っていないなら、NISAの期限がやってくる前に保有したい課税口座を決めて作っておきましょう。

一般口座のメリットはほぼないので、特定口座を作るのがおすすめです。

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ちなみに、NISAの非課税期間が終了する前でも課税口座へ移管できる証券会社が存在します。利用中の証券会社でやり方を調べてみましょう。

一般NISAならロールオーバーもできる

制度スタート初期から存在する一般NISA口座だけが利用できる方法です。つみたてNISAだとロールオーバーできません。

2018年までに買い付けた一般NISA口座に保有する金融商品は、非課税期間の5年を迎えたとき、期間最終年の翌年度分のNISA枠へ移せます。移す金融商品の資産価値が非課税枠120万円を超えていても大丈夫です。

2019年以降に買い付けた金融商品についてはロールオーバーできません。

現時点の制度だと、一般NISAで買い付けできる年が2023年までに決まっているからです。2019年以降に取得した金融商品をロールオーバーしたくても、受付を終了した2024年以降になってしまうため利用できないんですね。

保有する金融商品を売却

NISAの非課税期間が終了する前に、保有していた株式や投資信託などを売る方法です。

このとき、取得時の価値より高くなっていれば課税されることなく差額の利益を100%受け取れます。差額で損失が出たときも税金を取られません。しかし、売却で損失を出すと戻ってくるお金が少なくなるため注意が必要です。

NISA口座から移管するときに発生する問題

ロールオーバーする場合は特に問題ないので、この段階ならまだ気にしなくて大丈夫です。売却は移管とは違う方法なので関係ありません。

問題は「課税口座へ移管したとき」に発生します。

移管した瞬間に取得価額が変わる

「取得価額」とは、株式や投資信託など金融商品を取得したときの価値を金額であらわしたものです。

NISA口座で買い付けた金融商品を課税口座へ移管するとき、取得価額については、課税口座へ移管する時点の評価額に変化します。

どういうことかと言うと、例えば2014年に一般NISA口座で買った「ひまわり食品」という架空の銘柄があったとします。その時の株価が1000円でした。

1単元100株の銘柄だったので、株価に株数をかけて取得時に払った金額は10万円です。この10万円がNISAの取得価額にあたります

その後、ひまわり食品を一度も手放さずにNISA口座で5年間保有しました。5年間保有した結果、嬉しいことに価値が20万円まで上昇しています。

一般NISAは取得した年から5年間しか保有できないので、非課税期間最終年である2018年の翌年、2019年に課税口座の特定口座へ移管することになりました。

特定口座に移されたひまわり食品の価値は20万円で変わりません。

しかし、取得価額については2014年にNISAで買い付けたときの10万円ではなく、2019年に移管したタイミングに上がっていた20万円に変化します。以降、20万円の取得価額を基準にひまわり食品を保有するようになりました。

…こんな風に移管時の取得価額が決まります。

とても重要なポイントなので、変化する仕組みを忘れずに覚えておいてくださいね。

NISA口座の取得価額との差に注目

課税口座へ移管する際に考えられるパターンは以下の3つです。

  1. NISA口座から移管したら、取得価額が高くなった。
  2. NISA口座から移管したら、取得価額が低くなった。
  3. NISA口座から移管しても、取得価額に変化がなかった。

1と2はNISA口座で移管対象の金融商品の価値が上がっている、もしくは下がっているパターンです。最後の3はNISA口座で移管対象の金融商品の価値が、偶然にも一致しているパターンになります。

3のパターンはあまり気にしなくて大丈夫です。メリットが少なめで、デメリットも発生しないパターンだからです。といいますか、このパターンの発生はかなり珍しいので遭遇する確率は低いと思います。

NISAから移管後に発生するメリットとデメリット

メリットがあるのは取得価額が高くなったパターン

NISA口座の取得価額が10万円だったとして、課税口座への移管で取得価額が20万円に変わったとしましょう。

この状態なら、ラッキーだと思ってください節税のチャンスが巡ってくるからです。

保有する投資向け金融商品は、買ったときと売ったときの差額で儲けが発生します。

課税口座なら差額に対して税金を取られますので、儲けが多いほどたくさんの税金をもっていかれます。

しかし、NISA口座から移管したタイミングに取得時の価額より上がっていると、課税口座へ移管した後に更に価値が上がっても、NISA口座の取得価額に比べて売ったときの差額が少なくなります。

差額が少なくなった分だけ節税できるというわけです。

デメリットになるのは取得価額が下がったパターン

NISA口座の取得価額よりも課税口座へ移管したタイミングに取得価額が下がってしまうと、支払う税金が多くなってしまいます。最も避けたいのがこのパターンですね。

課税口座移管後に株価が上昇して、売却を決めたとしましょう。このときにNISAで取得した価額よりも下がった時点から保有がスタートしているので、売ったときの差額が大きくなります。

差が広まった分だけ多くの税金を取られ、NISAで運用した節税の効果が弱まるデメリットが生じます。

取得から売却までの流れを見てパターンを比較

メリットとデメリットのパターンの違いを理解しやすいよう、簡単な流れを以下に書いてみます。

NISA口座で買った株の取得価額が10万円です。

その後、課税口座へ移管し継続して保有したら株価が上昇し、価値が30万円になります。

30万円になったタイミングで売却を決めたとしましょう。

さて、ここで仮に「最初から課税口座で運用」していたなら、20万円の儲けが得られます。

売却時30万円 - 取得価額10万円 = 20万円の利益

課税対象は20万円で、この利益に対する税金を取られてしまいます。

以上を踏まえて、「NISA口座から課税口座への移管によって取得価額が20万円に上がったパターン」で見てみましょう。

売却時30万円 - 移管時取得価額20万円 = 10万円の利益

課税対象は10万円で、最初から課税口座で保有するより10万円も儲けを少なくでき、節税効果が上がります。売却して戻ってくるお金は同じですから、節税できた分だけNISA口座から移管した場合のほうが儲けを増やせるわけです。

続いて、節税にならないパターンです。

NISA口座で取得価額が10万円だったのに、その後株価が下落して8万円の価値に下がりました。

8万円に下がったタイミングでNISAの非課税期間が終了したので、課税口座へ移管することに。

その後、株価が上昇して価値が30万円になります。この30万円で売却した場合の計算は以下のとおりです。

売却時30万円 - 移管時取得価額8万円 = 22万円の利益

課税対象は22万円で、移管時に価値が上がっていたパターンと同じ30万円で売却しても差額が広がっています。この22万円に対する税金を払わなければならず、せっかくNISA口座を使ったのに売却時の節税効果を得られない結果に終わりました。

むしろ最初から課税口座で保有していれば、10万円の取得価額を維持できていました。同じ30万円で売却したら課税対象は20万円で済みます。

NISA口座で保有していたのが原因で2万円多く利益が発生したように見えてしまうため、課税口座よりも多くの税金を支払う羽目になります(配当や分配金の節税効果を考慮しない場合)。

最後にご紹介したパターンのように、NISA口座で運用中に金融商品の価値が下がってしまうと厄介です。移管によって節税の価値が下がる他、課税口座より税金を多く支払う可能性も起こり得るわけなんですね。

NISAのデメリットを避ける運用のコツ

投資で絶対儲かる必勝法のようなものは存在しません。この方法ならNISAから移管する場合のデメリットを完全に防げる手段などないので、デメリットが発生する確率を下げる工夫をするしかないでしょう。

  • 割安な商品をNISAで買い付ける
  • リスクの低い金融商品に限定する

割高よりも割安な商品のほうが今後下がる確率が減ります。高リスク商品よりも低リスク商品なら値下がりの幅を抑えやすいため、価値が下がっても短期的に戻してくる期待が高まります。

NISA口座で保有中に価値を下げるのが心配なら、NISAの非課税期間が切れる前に思い切って売却しても良いかも知れません。

売らずに長く保有したい場合は、取得時の価額よりも上がっている状態を確認してからNISA口座の非課税期間が終了する前に、さっさと課税口座へ移管してしまう方法が使えます。これなら取得価額が下がるリスクを簡単に回避できます。

もしくはNISA口座で保有中に配当や分配金が非課税になる恩恵に魅力を感じるなら、移管時の取得価額が多少下がってもよしとする考えもありますね。配当利回りの良い銘柄を長く保有すれば、その価値が高まると思います。

いろいろ考えてみても、やはり完璧なデメリットの回避方法は存在しませんね…。

ともあれ、NISA口座から課税口座へ移管するときの取得価額によって節税の恩恵が弱まってしまうデメリットについて覚えておくと、何も知らない人より賢い投資ができそうです。

NISAが持つもう一つのデメリットである損益通算できない知識と合わせて、非課税の恩恵を得ながら安全に資産を増やす工夫をしてみましょう。

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