NISAはメリットばかりではない。損益通算のデメリット

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NISA口座で運用すれば、利益が出ても税金を取られないのが最大のメリット。

節税になるので、投資を通じて貯金を増やしたりお金を少しでも稼ぎたかったりする場合に心強い味方になってくれます。

NISA 少額投資非課税制度NISA口座で投資すれば税金がお得に!メリットを学ぼう

なんとなくメリットばかりが目立つ一方で、NISAにもデメリットが存在します。気をつけましょう。

すべての投資家に100%のメリットをもたらす制度ではないことを理解してください。

NISA口座だと損益通算できない

NISAのデメリットの一つが、損益通算できないことです

損益通算とは利益から損失を引き算して、課税対象の所得を少なくする方法です。納める税を抑える効果を期待できますが、NISA口座だとこの方法を利用できません。

損益通算と源泉徴収について

サラリーマンの給与を例に学ぼう

税に関してあまり詳しくない人だと、損益通算などと言われても少し分かりにくいかもしれませんね。この場合、サラリーマンのお給料を想像すると理解しやすいでしょう。

サラリーマンなら毎月定期的にお給料を受け取りますよね?

しかし、毎月の給与明細を見ると、本来の金額から税金分が引かれています。

手取りが少なくてがっかりする瞬間ですが、この税金のうち所得税分が引かれている状態を「源泉徴収」と言います。

税金のマメ知識
所得税の他、住民税などもお給料から引かれる状態を源泉徴収と呼ぶ傾向があります。しかし、住民税などは地方自治体に納める「特別徴収」の仲間です。厳密に言うと源泉徴収は国に納める所得税に対する制度です。

源泉徴収とはいわゆる「税金の前払い」です。

所得税は対象年度が終わった時点で決まります。個人の場合なら1月1日~12月31日の1年間で発生した所得(利益)が対象です。

1年間の合計所得を適切な所得税率で計算した後、支払うべき所得税が決まります。いわゆる確定申告ですね。

このように、本来の所得税は翌年の確定申告のときに支払うものです。

ところが、サラリーマンやアルバイトなどのお給料をもらっている立場の人、個人事業主で対象になる業務内容の報酬を受け取る立場の人は、源泉徴収の義務が生じます。

お金を受け取るタイミングで雇い主の会社側が源泉徴収し、所得税の前払いを行うよう法律で決まっているんです。

株式投資における源泉徴収の仕組み

ネット証券などの証券会社には、「特定口座の源泉徴収あり」という課税口座が存在します。NISA口座と違って利益を得ると、その分の税金が即座に引かれる口座です。

特定口座の源泉徴収ありでは、株式を売ったり配当を受け取ったりして利益が発生すると、証券会社が自動的に源泉徴収を行います。

なので、売却益や配当などで受け取った金額を見ると、実際の利益より少ない金額に下がっているのがわかります。お給料の手取りとよく似ていますよね。

損失で利益が減ると払いすぎた税金が戻ってくる

源泉徴収は投資で利益が出たときに発生するものです。

一方で、取引によって損失が出てしまったらどうなるのでしょう?

状況によっては税金が戻ってくる」が答えです。

所得税は所得金額が多いほど増える仕組みなので、源泉徴収された税金が本来の所得に対するものよりも多いのがわかった時点で払い戻されます。還付金とも言われています。

投資で10万円の利益が発生して源泉徴収された後、6万円の損失が出たとします。

利益(所得)10万円 - 損失6万円 = 利益4万円

引き算した結果、利益が4万円に減りました。

10万円ではなく4万円に対する課税なので、10万円で支払った税金だと多く払いすぎています。本来の4万円分の課税に調整するために、自動的に税金が戻ってくるんですね。

もし6万円ではなく、15万円の損失を出したらどうなるでしょうか?

利益(所得)10万円 - 損失15万円 = マイナス5万円

損益通算の結果、利益が消滅しています。利益がないところから所得税は発生しませんので、源泉徴収された10万円分の税金がまるまる戻ってくるでしょう。

損益通算は節税に使える、とても強力な制度なんです。

この仕組みはサラリーマンの年末調整と似ています。源泉徴収で払いすぎた所得税を年末調整によって取り戻せますから、少ないお給料の人が多額の税金をぼったくられずに済むんです。

損益通算できないNISA口座で発生する問題

源泉徴収された税金が戻ってこない

NISAは非課税口座のため、「税の対象になるお金が発生しない」ものとして扱われます。

株式や投資信託を売ったときに利益が出ていれば、買ったときよりもお金が増えます。配当や投資信託の分配金もそうです。しかし、NISA口座に預けている金融商品は課税対象の利益がなかったことにされますから、税金を払わずに済みます。

ここまでがよく聞かれる、有名なNISAのメリットです。

ただNISA口座だと、利益だけでなく損失を出したときも税金に無関係なお金として扱われるのが大きなポイントです。

課税口座にも株式や投資信託などの金融商品を保有していて、そこから利益がたくさん出れば多くの税金を払わなければなりません。

このとき、同時に利用しているNISA口座で大きな損失が出てしまったとします。

特定口座内の出来事であれば損益通算によってトータルの利益が減り、すぐさま税金が戻ってくるでしょう(特定口座の源泉徴収ありを利用中の場合)。

ところが、NISA口座の損失は税制上なかったものとみなされるので、特定口座の利益と損益通算できず、税金を取り戻すことができません。

  1. 課税口座の利益:10万円(10万円に対する税金を支払う)
  2. NISA口座の損失:15万円(税とは無関係)
  3. 結果:マイナス5万円だが、源泉徴収された10万円に対する税金は戻ってこない

1年間の運用で利益も損失も出した場合、状況によってはわりと大きなデメリットになる問題なので、覚えておくと役に立つでしょう。

確定申告する場合も損益通算できない

以上の説明は、主に源泉徴収される課税口座を選んだ場合に起こるデメリットでした。

一方、投資家自身で確定申告を行う場合も同様に、NISA口座の損失は損益通算の対象外として扱われます。

証券会社には源泉徴収されない口座が存在します。「特定口座の源泉徴収なし」と「一般口座」です。

これらの口座は取引した日に税金を取られません。そのため、翌年に入ってから投資家自身で前年分の投資の損益を計算して、確定申告を行わなければなりません。

確定申告でも源泉徴収と同じく、課税口座内の利益と損失であれば損益通算できます。

NISA口座はそもそも税金と無関係の口座ですから、確定申告する必要がありません。

損益通算したくてもできないので、NISA口座の損失分を利用した節税方法は諦めるしかないんです。

課税口座だけの運用より損をすることも

課税口座は損益通算できるおかげで、1年間で大きな損失を出しても利益を出していれば戻ってくる税金によって、資産減少の拡大を防げます。

また、投資家自身が確定申告を行う場合でも1年間の利益から損失を引き算できます。おかげで課税対象の所得を少なく見せることが可能です。

NISA口座と課税口座を併用するときに怖いのが、「NISA口座で運用する金融商品で利益がほとんど出ず、損失ばかりを出してしまったとき」です。

損益通算のような対処法がないので、課税口座のみで運用する場合よりも節税効果が薄れる条件が整ってしまうこともあるでしょう。

上のほうですでに似たような説明をしているのでしつこく感じるかもしれませんが、この問題は結構複雑なのでもう一度具体的に、以下の例を使って解説してみます。

(ずいぶんと極端な例ですが、理解しやすいよう大雑把な設定にしています)

  • 課税口座の利益:20万円(20万円に対して課税)
  • 課税口座の損失:なし
  • NISA口座の利益:なし
  • NISA口座の損失:30万円

課税口座の利益20万円に対する源泉徴収が約20%ですから、約4万円の税金を取られて16万円が残ります。損失の30万円も課税口座内で発生すれば本来の所得がマイナス10万円に修正されて消滅するので、源泉徴収された約4万円の税金が戻ってくるでしょう。

源泉徴収後16万円 - 損失30万円 + 還付金4万円 = マイナス10万円

トータルの損失は10万円程度で済みます。

ところが上の例のように、30万円の損失がNISA口座だとマイナス10万円の所得に修正されず20万円の所得があったとみなされます。そのため、課税口座で支払った約4万円の税金が戻ってきません。

源泉徴収後16万円 - NISA損失30万円 = マイナス14万円

トータルの損失は還付金がないので14万円のままです。

この場合、NISA口座で利益を4万円出せれば課税口座と同じ損失で済みます。しかし、損失の差を埋めるのに4万円を稼ぎ出す工夫や技術が必要で、難易度を高めてしまうのがデメリットです。

損益通算できないNISAのデメリットを避けるには?

NISA口座で損失をほとんど出さず、利益ばかりにする

しかないでしょう。

そのためにも、リスクの高い金融商品をNISA口座で扱わないようにします。

利益を出す確率が比較的高い、低リスクの金融商品のみを選んで運用しましょう。

購入単価の高い国内株式などの個別株はリスクが高めなので、課税口座の運用が無難です。NISAで個別株を買うなら少ない買い付けに調整できて損失の幅を狭くしやすい、単元未満株が良いかもしれません。

また、長期的な運用で利益を出しやすいとされる投資信託ならリスクが低めで、NISA口座で運用する商品にピッタリです。

ここまで損益通算できないNISAのデメリットをまとめてみました。

別のデメリットについては以下の記事でご紹介していますので、合わせて読んでみてください。

矢印 UP&DOWNNISAのデメリット?課税口座へ移管するとき何が起こるのか